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嘘だらけの世界史

トライアル19日目

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世界



今日はほんのレビューの日です
嘘だらけの世界史という本です
精神分析医としての著者は広く文化論や歴史を論じる心理学者でもあります。
世に当たり障りのない結論を導くユング派が多いなかで、彼はフロイド派の先鋭な思想の体現者で、批判論評の切り口が鋭いことでも有名です。「日本がアメリカを許す日」とか
嘘だらけの世界史という挑発的なタイトルは、あたかも一流のキャッチコピーとも呼べる、日本人の心の奥底まで見透かした炯眼を感じずにはいられません。
今回はマーティン・バナールの歴史認識を通して歴史的言説一般に関わる差別心理、屈辱の感情の生み出す歴史、劣等感が生み出す征服感を軸に、世界史の断片に存する、特に古代史の部分の矛盾を整理する試みです。
白人は劣等種であると聞くと、どう思いますか?

音声はこちらから↓
このような論評は実はヨーロッパ知識人の間ではそう珍しいことではありません。
そもそも旧約聖書や古代文書を「素直に」読んでみると、
そういう結論に達することが多いです。
自らイスラムの最先鋒として立ち、ブラックイズビューティフルの思想を打ち出したマルコムxは有名な言葉を残しました。
ご存知のとおり、イエスキリストは黒人である
というものです。
民族の内部に脈々と受け継がれているのは
語り継がれている先祖の物語には、血ですら洗い流すことのできない
もっと我々の身に張り付いて離れない心があります。

アメリカ人は、黒人に差別された白人のなかでさらに奴隷にされて差別されたユダヤ人に差別されたキリスト教徒に差別されたピューリタンに端を発する、四重の非差別のどんづまりの民族なのである

と聞かされたら、どう思いますか?
ちょっとわけがわからないと思いますが、
現存する史書と、現行の政権と政策、
法規と世界観というものを精神分析すると
このような驚くべき結果が出てくるのです。

精神分析によると、他国の人間に対して、圧倒的な武力を手にした時に見せる残忍さ、凶暴になれる度合いこそ、
その民族の奥深いところに宿された劣等感の放縦である
というところに繋がりは見出されます。

ヨーロッパ中心主義はヨーロッパー文明は人類最高の発明であるという常識が今日の人種的発展の基礎にありますが、
このヨーロッパの根拠はギリシア文明にあります。
バナールは、このギリシア文明が独立的であるとする歴史的根拠はないにもかかわらず、ギリシア文明を他の文明と断絶した記載はどこから始まるかをたどってみると、ドイツ思想に行き着くと言います。
確かに、文化人類学や宗教学、民俗学、考古学、美術史、法制史などを見ても、明らかにギリシア文明はその起源においてセム系やその他の文明と連続性を持っています。
「近代ヨーロッパ人は、ヨーロッパを古代ギリシアと同一視し、
ギリシア文明の独自性を賛美することを通じて間接的にヨーロッパ文明の独自性の賛美を、言い換えれば、ヨーロッパの自惚れ、ナショナリズム、誇大妄想を表現しようとしたのではないかということがまず考えられる」
これは人種差別的働きであり、この発想によって人種差別は規定されている
という興味深い思考軸を提供します。

誰にせよ人間が歴史を書くのは、世界の現状に対するなんらかの抑えがたい不満、なんとかしなければならないという何らかの切羽詰まった目的、あるいは、自分、自民族、自国の業績か何かを是非とも正当化したいというような目的などがあるからであり、
客観的事実を正確に記録しておきたいというような純粋で無色透明な動機からではないことは明らかですね。

ヨーロッパ中心主義に対してのみ、精神分析的批判をするのではなく
大事なところは史学とは私自身の欲求と生存と進化と願いを載せているところにその有機的連続性をもつという指摘がなされるところだと思います。
アジア、中国がどういう歴史認識をもっているのか
なぜ他国に対して強行なのか
日本人はなぜアジア人を蔑視するのか
なぜ日本人は日本文化独自のルーツを見つけようと躍起なのか
多くの日本人は歌舞伎や能、「わび」や「さび」義理人情などの日本文化がユニークで外国人には理解しがたいと思い込んでいますが、
これもヨーロッパ中心主義と同じではないのか
などなど
見えてくるものは大変意義深いと思います。
芥川龍之介もこの点について論及していますね。

それら優位に立ちたい、打ちひしがれた心
劣等感
それらは唯一私たち自身の進化、ステージを高く上っていく心によって克服されるのかもしれません。

仙人さん最後のビジネスモデル

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