copywriter-住職’s blog

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人間の建設

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アウフバウトレーニングを知ってますか
アウフバウとは建築するという意味で
aufbauen アウフバウエン
組み立てていくという動詞から
体幹や下半身にある
基礎的な動作を支える筋肉に直接働きかける
トレーニングを指します
大地と平行に寝たままの姿勢でおこなることが多く
スポーツ科学先進国であるドイツで提唱され
スポーツ選手のリハビリにも使われるトレーニングです
 
どういう効果があるかというと
股関節の可動域が広がったり
柔軟性が強化されたり
足の回転数が増したりします
 
このアウフバウは建設という日本語で意味されますが
力の論理であるところとは
違う論理を持っています
力の論理ではうまくいかないところを
人間の主観的な作用によって変化させようという
意思の力を内側に含んでいます
時には構築不可能な建造物であっても、そのプロセスの中に
建設は成り立つという考え方です
 
そこで、歴史や文化を表す言葉として
アウフバウはよく用いられます
 
僕たちの関与している時代や歴史、経済、政治
それはゼロから作り上げられたものです
一つ一つを確認することもできない
途方も無い過去の事実の積み重ねです
 
その事実を知らなくても機能している反面
その事実に深く制約されてもいます
 
意識的に抜け出すことができない迷宮として
文化というものがあります
でも、その中で何かを付け加えたいという意思があり
何かを作っていくという行為全体を
コンテクスチュアル・インテリジェンスを含めて
建設という言葉で表します
 
経験ではなくて真実
 
この違いを表している逸話があります
田辺元さんの文章からお借りします
 
昔は親が子に泥棒の技を教えたものでした
 
ある泥棒の親方がいたが、都市をとってきたので、息子が修行していかねば
食っていくことができない事となった
そこで息子は親父に泥棒の商売を教えてもらいたいと頼んだ
すると親父は息子を連れて金持ちの家に垣根を破って忍び入り
立派な着物の入っている大きな櫃を開けてその中の衣類を盗むために息子を入らせてから
蓋をして錠をかけ、そして自分垣根から外に出てその家の玄関を叩いて
「泥棒が入った、泥棒が入った」
といって家の人を起こした
息子は騒ぐと見つかるし、と言って黙っているとそのまま飢え死にせねばならなくなるので
実にけしからぬ残酷な親父であると恨んだ
これは我々がどうにもならないところに落ちたところである
そこで何にもできずに何もしないでいては泥棒になる資格もない
ところで息子は櫃の中でネズミがものを噛むような音をさせた
するとネズミがいるというので女中が手燭を持ってきて蓋を開けたので
彼は女中の燈りを決して逃げた
泥棒だというので家の人たちが後をおうと
大きな石を井戸に放り込んで、家の人が逃げられなくなって井戸に飛び込んだのかと思って
井戸の周りに集まって騒いでいる隙に逃げ帰った
そして父を詰ると、父は
「それは大変結構だ、それで一人前になれた」
と言ったという
 
どうにもならないところから、初めて自由な働きが生まれてくる
それが建設という言葉に含まれているのではないでしょうか
 
 
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